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 冬空の下をとぼとぼと帰る。長かった年末のお休みもついに綺麗に仕舞われて、面白味のない生活が再開した。へらへらと人間関係が壊れない程度の笑みを浮かべて一日を終える。お金のために働いている。そのお金も一応は銀行口座の数字はカウントアップしていくが何年も同じ職場で生活を送っていると、いったい何のためにここにいるんだなんて解答のない問題を自分に問うてしまう。教養がないからか精神がいつまでも十五歳くらいで止まってしまっているからか、それに「まぁ生きるため」と明確ではあるけれどしょうもない台詞しか吐けないわけである。帰り道で日高屋でレバニラ定食を注文する。帰り着いてこまごまとした連絡をする。ショート動画を作るとか、音関連の細部の詰めとかタスクをメモ帳に書き込む。洗濯機を回す。ごうごうと一週間ほどの洗濯物が回る。大した生活をしてるわけでもないのにゴミはたくさん出るし、服は汚れる。なんとか一般市民に擬態するためにこういったこまごまとした事柄を消化して気付くと死ぬんだろな、と思った。

 

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 ずっと仕事中槇原敬之の「もう恋なんてしない」を口ずさんでいた。「片隅で迷っている」という歌詞を幼いころ「サーカスで迷っている」と間違えて覚えていた。どうしてこの人はサーカスで迷っているんだろうとは思っていたけれど、自分にとっては歌詞なんてものは当時その程度のものだったのでそうか、サーカスかと勝手に納得していた。該当の曲で「いつもよりも眺めがいい 左に少し戸惑ってるよ」という歌詞があってずっと好きである。恐らくは車に一緒に乗っていて、助手席の相手の事を思った言葉だと思う。もしくはいつも手を繋いでいたのかもしれないけれど。簡単な言葉で、ただ悲しいと伝えるわけでもなく、そのぽっかりと空いた穴みたいなものを表現できる歌詞が好きだ。難しい言葉を多く使う歌詞が悪いとは言わないけれど意味がなきゃいかんなと思いながら、ずっとマスクの下の口の中でぶつぶつと歌っていた。やっと自由を手に入れた 僕はもっと寂しくなったなんてさ!